先日、妻に誘われて映画を観に行った。
映画館での上映ではなく、近くの施設で行われた小さな上映会みたいのものだったが50人以上は来ていた。
「やさしくなあに」というタイトルのドキュメンタリー映画だ。
知的障害とてんかんをもつ少女を8歳から35年追いかけている奈緒ちゃんシリーズの最新作、らしい。
奈緒ちゃんシリーズはこれで四作目になるようで、最初は8歳だった奈緒ちゃんもこの作品の中で40歳を超えた。
母も父も歳をとり、健常児の弟も立派な大人になっている。
親も子供も歳をとるんだなーと寂しくなったりもした。
そして何より衝撃だったのは、
ほとんどうちと同じ状況じゃねーか!
ということ。
父と母、そして障害児の娘と健常児のその弟。全くもって同じだ。
さらに奈緒ちゃんがてんかんまで持ってるというもんだから、そりゃ妻が見たがっていたのもわかる。うちの娘もてんかん持ちだからだ。
親が障害を持つ娘にどういう風に接しているか、そして娘と息子がどういう風に成長したか、それら全てが参考になった。
発達障害の娘がいなかったらまず見る機会がないだろう映画。せっかくなのでいくつかピックアップして感想を書いていく。
ネタバレあり。注意してね。
仲の悪い父と息子
父と息子がかなりぶつかり合っていたというのが印象に残っている。カメラの前での大げんかはなかったが、おそらくかなり仲が悪いだろう。
奈緒ちゃんの父は、いかにも昭和の頑固者といった感じだった。
そんなに頻繁にカメラの撮影が入っているわけじゃなさそうだったので家族の関係の詳細はよくわからないが、もう少し仲良くできる方法はないかねと。
それこそ、「やさしくなあに、って言わなくちゃ」じゃないか。
家族じゃなかったとしても、誰かが喧嘩してるのは不安になる。
しかしそれも父と息子の問題か。仲良くしなきゃいけないわけでもない。
母が父に耐えきれず家出し突然の一人暮らし
これも驚きだった。突然、母が家出をして一人暮らしを始めていた。驚愕の展開である。
でもわかる。わかるよこれ。
うちの実家も父が仕事をやめて家に一日中いるようになってから、母と父の仲が超絶悪くなった。
奈緒ちゃんの家の場合、二人の子供が独立して急に家に夫婦二人きり。
今までは仕事に行ってて1日に数時間しか顔を合わせない人が朝から晩までいるのだ。
子供がぎゃーぎゃー騒いで紛れていたそれまでと違って、そりゃ喧嘩するなって方が無理かもしれない。
奈緒ちゃんのお母さんがインタビューで話していたのが、
「少しでいいから気遣いをしてくれたら、って思うのは贅沢かしら」
的なことを言っていた。多分そういうことなんだろう。家族として、旦那として、妻の苦労を理解し労わる姿勢を見せなければ、うんざりしてしまうんだろう。
しかし60を超えて定年退職したあとに、夫婦別れて一人きりというのはなかなか寂しいものである。
奈緒ちゃんのてんかん、大人のてんかん
映画の中で、奈緒ちゃんがてんかんで倒れるシーンがあった。30歳を超えてる年齢で。
あの感じが、もう全くうちの娘と一緒。倒れて、がたがたして、終わったらぽけーっとして眠って動かなくなって。
大人になっても同じようなてんかんが続くのか。
少し未来の現実が見えた気がして怖くなった。
奈緒ちゃんは7錠の薬を飲んでいると言っていた。7錠だぜ。ふーむ。
何種類かはわからないが、7錠もの薬を飲み続ける奈緒ちゃん。
我が娘もどうなるのか、薬が効くだけでもありがたい話なのかもしれない。
また母が、「いつもは撮影中には発作起こさないのにね」と言っていたあの感じ、てんかんあるあるなんだなーと思った。
うちの娘も車に乗ってるとてんかん起こさない、外に出てたらてんかん起こさないなどパターンが決まっていて、たまに例外があると同じことを言っている。
あるあるだわー
突然亡くなったはるちゃんから学ぶこと
奈緒ちゃんの幼馴染というはるちゃんが、映画の中で突然亡くなった。
理由は不明だが何かしらの障害をもっているようだった。
障害を持っていると早死にするのか?
そんなこと聞いたことがなかったのだが、そういうもんなのか?と調べて見たら、
このサイトがわかりやすく解説してくれていた。
てんかんで事故を起こすとか、服薬の影響で体に副作用があるとか緊急時に助けをよぶことができないなど、知的障害をもっていると寿命は短くなる傾向にあるらしい。
ふーむ。
それでも平均寿命より長生きすることはできるはず。環境は大事だな。
グループホームという生き方
奈緒ちゃんはこの映画の中ではグループホームで生活をしている(多分)
”私たち親が死んだあと、残された娘が一人でも生きていけるように”
そのような思いがあったのだろう。
奈緒ちゃんは自分の部屋も綺麗にしていて、施設の周りの住民にも大きな声で挨拶をしてなかなかにうまくやっているように見えた。
寿命が短い傾向にあるとは書いたが、きっと我々夫婦も娘より早く死ぬことだろう。
もしかしたら事故にあうかもしれないし、認知症になってしまうかもしれない。
そんな時に娘が路頭に迷わないように、できるならば早い段階で自立を促すというのは悪い選択ではないはずだ。
娘がどれだけの成長を遂げるかわからない今からあれこれ考えても仕方がないが、
親が突然いなくなっても生きていける
そんな環境作りだけは最低限サポートしてから死にたいもんだ。
とても勉強になった。
残念だったこと
一応感想ということで本音も書くが、見ていると理解するのがやや辛い部分があった。
映像がいつの映像なのかわかりづらいこと、登場人物が何を話してるのか、映像に出てる人間が誰なのかわかりづらいことなど。
奈緒ちゃんが40歳超えても20代に見えるのも一つの要因かな。見た目すごく若い。
あとたまに奈緒ちゃんが年齢を聞かれて「75!」とか適当に答えるネタが何度かあって、本当の年齢が視聴者の私にはガチでわからないという状況にもなった。
NHKなんかのドキュメンタリー番組なら、会話のテロップ、時間が飛んだら西暦などのテロップ、また説明のナレーションなどなど、これでもか!ってくらいにサポートをするが、この映画はそんなものはほとんどない。
出ている人物が父なのか撮影者のおじさんなのか、弟なのか弟の友達なのか。
奈緒ちゃん30才くらいの誕生日の映像かなー?と思ったら「43歳」だったり、自宅で偉そうに敬語で話してる若いにーちゃん誰だ?敬語だから施設の職員か?と思ったら自宅にいるおじさんと話す弟だったり、状況を理解するのに頭をつかって集中できなかった。
会場の音響施設が悪かったというのも一つの要因かもしれない。
妻はすんなり理解できていたようで満足していたので私のせいかもしれない。
視聴後にわけわからんかったと文句ばかり言っていたので妻と険悪な雰囲気になったりもしたぞ!私は悪くない!
映画館じゃないし、視聴環境が万全じゃないのでこの辺は仕方ないのかもしれないね。
見終わって
以上、簡単ではあるが「やさしくなあに」を見た感想だ。
これから私たち家族にも同じような問題が舞い込むのだろう。
その時にどう考え、どう対応するか。先の未来を見せてくれたこの映画はとても参考になった。
娘のてんかん、薬、夫婦の関係、親子の関係、障害をもつ姉がいる弟の立場。
グループホームの生活や、施設の生活、また障害を持った人がどういう生活をしているのか、何ができるのかなどなど。
いやー、これは相当に勉強になる映画だぜ。
障害を持つ家族がいる方は、近くで上映会があればぜひ見にいくことをおすすめする。
また続編があるならぜひ見にいきたい。
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