ステップファザーにできること

発達障害マイペース娘・健常児やんちゃ坊主と過ごす継父のステップファミリー奮闘記

ステップファザーにできること

介護の現場で出会った強烈で暴言がすごかったおばあちゃんの話

私は妻と結婚する前まで、介護の仕事をしていた。

 

人手不足だから私みたいな人間でも潜り込めるだろうという思いもあった。

 

父や母が介護が必要になった時に、何かしら役に立つだろうという思いもあった。 

 

そして超高齢で寝たきりになったり、認知症になった人たちは一体何を思い、どう生活しているのか知りたいという思いもあった。

 

実際に触れてみなければわからないことが多い。

 

自分の意思で動けなくなった人たちは何を思うのか。

 

私が、家族が同じ状況になったら何を思うのか。

 

介護職に就くことは勉強になるはずだと感じた私は、未経験で一番ヘビーだと言われる特別擁護老人ホームに潜入することになった。

 

中にいる利用者の方々は90歳越えは当たり前、100歳を超えている方もいる。

 

ほぼ全員が認知症だ。歩ける人は数えるくらいで、介助がなければ転んでしまう。

 

胃ろうの人も何人かいた。全介助で寝たきりの人もいた。目は開くが寝たきりで全く反応はないものの、口からご飯を頑張って食べる人もいた。

 

そんな職場で様々な人と出会ったのだが、その中でも一人の女性の話をしよう。

 

その女性は80歳を少し過ぎたおばあちゃんだ。

 

レビー小体型認知症というもので時に幻覚や幻聴が見えるという病気だった。

 

そこにアルツハイマー認知症も加わって、なんというか、まあ暴言を吐くかなりきつめの女性である。

 

ちょっと太った職員がレクの司会をしていると

 

「ぶたがいるね、ブタ!ブタはあっちいけ!くさいくさい!」

 

と大声をあげて妨害があまりにもひどいので一人だけ隅っこに移動されたり。

 

お偉いさんが「おはよう」と声をかけても

 

「くさい!くさい!くさいのがきたよ!」

 

と大声で連呼する。

 

トイレ介助していても、

 

「あんたへたくそだね!!へたくそ!!あっちいけ!!」

 

と大声で叫び罵倒する。

 

かなり暴言がひどいおばあちゃんで、職員の間では正直誰も相手にしたくないという感じだった。

 

そんな中、なぜか私は最初から気に入られていた。

 

「○○さん!あなたは真面目でいい、いい結婚相手が見つかるよ」

 

と突然言われたり。

 

「○○さん、あのお尻が大きい子があなたにお似合いなんじゃない?」

 

とひそひそ声で他の職員を勧められたりとか。

 

穏やかな時は色々と昔の話を聞けたし、きっと病気じゃなければ普通のおばあちゃんなのだ。

 

ただ、そんな気に入られていた私でも暴言は何度も浴びせられた。

 

ノロマ!あんたは仕事が遅いねぇ、ノロマだねぇ、ノロマ!!」

 

などと、正直何度暴言を吐かれたかわからない。まあそういう病気なのだ。

 

私だけ気に入られているということで、やたらその女性の相手をさせられた。

 

むかついてむかついて仕方がない時もあったが、私の中で強烈に記憶に残っているのはこの女性なのである。

 

あまりに強烈すぎて、生涯忘れることはないだろう。

 

そして、その女性が今、看取りに入ったのだという。

 

おそらくもう数日持たないとのことだ。

 

元々特別擁護老人ホームは皆高齢者ばかり。私よりも先に亡くなっていく。

 

それは病気だったり寿命だったり仕方ない部分はもあるし、実際に何人も見送ってきた。

 

それでも当時は仕事が忙しすぎて、悲しむ余裕すらなかった。

 

介護の現場は壮絶で、人が亡くなった日にも落ち着く時間はない。それで仕事は止まることもないのだ。

 

最近、とても笑顔が素敵だった100歳を超えるおばあちゃんも亡くなったそうだ。

 

調子を落としてからは早く、苦しむことなく逝ったそうなのだが会いにいくチャンスがなかった。

 

最後に顔が見られなかったのが本当に残念だ。

 

うん、やっぱり最後に顔くらいは見ておきたいのだ。

 

だから今回は妻に無理を行って子供達を見てもらい、あの暴言が酷かった女性に会いに行ってきた。

 

聞いていた状況よりはまだマシだったが、もう食事も水分もダメだそうだ。

 

顔もややむくんでいて、人相は変わっていた。

 

それでもいびきをかきながら眠っているこの女性を見て、相変わらずだなーと思わず笑ってしまった。

 

色々と勉強になった。

 

蹴られたし暴言も吐かれたしクソババアとしか思えない時もあったが、死んだら寂しいなと思う。

 

やっぱり知ってる人が死ぬのは寂しいよ。 

 

でも私にはもう止められるものでもないし、何もできることはない。

 

ただ、本当に勉強になったと。本当に感謝していると。

 

そう伝えるだけである。

 

 

この女性の顔を見ながら、久しぶりに他の施設利用者の方にも挨拶をしてきた。

 

変わらない人もいれば、だいぶレベルが落ちている人もいた。

 

私はたまにしか顔を出さないし、なかなか施設での生活が面白いと感じることは難しいだろうが。

 

顔を見たら長生きしてほしいと思ってしまうな。

 

何が幸せで何が不幸なのか、生きていれば幸せなのか死ぬことが幸せなのか。

 

介護施設に住んでいる人たちと接していると色々と考えることがある。

 

それでも、久々に皆の顔が見ることができて嬉しかった。

 

この機会を作ってくれたことに感謝したい。

 

そしてまた、いつかどこかで会えたらいいなぁと思う。

 

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